【目次】
1.はじめに
2.情報Ⅰ 2-1.勉強法
3.英語 3-1.変更点 3-2.勉強法
4.国語 4-1.変更点 4-2.勉強法
5.数学 5-1.ⅠA変更点 5-2.ⅡBC変更点 5-3.勉強法
6.社会 6-1.変更点 6-2.勉強法
7.まとめ
実施4年目を迎えた大学入学共通テストですが、2025年度入試において、新学習指導要領下での初めての試験が実施されます。情報Ⅰの新設や科目の再編成、そして解答時間の変更があります。したがって、過去問の使い方や勉強の方法を根本的に変えていかなければならないことに繋がります。このページでは2025年度以降の共通テストで新設の情報Ⅰと、内容に変更のある科目、つまり英語・国語・数学・社会に関してまとめ、その勉強法についても紹介していきます。これから大学受験を迎える皆さんがどのように科目を選択し、学習に対応していけばよいのかの指針にしていただければと思います。
2021年3月公表のサンプル問題では大問3題、2022年11月公表の試作問題では大問4題となっています。試作問題では配点が公表され、情報Ⅰの各分野の中で『コンピュータとプログラミング』が100点中46点と配点が一番大きくなっています。高等学校の情報Ⅰに先駆けて、小中学校でもプログラミングの授業が必修となっているため当然と言えば当然かもしれません。では、なぜ小中学校でのプログラミングや高等学校での情報Ⅰが新設されたのでしょうか。急速な情報化やグローバル化に伴い、社会が予測できない速さで変化しています。予測ができない世の中に対応していくため、順序や効率まで考慮したプログラミング的思考(論理的思考)が必要だからです。また、スマホ等の機器やAI技術の発展は明らかです。これらからも情報通信技術の発展は世の中を変えていくことでしょう。これらの危険性、利便性などを理解し、どのように世の中を変えていくかを決めていかねばいけません。そのために情報を学習していくことは今後必要不可欠となるわけです。
インターネット、SNS、検索エンジンなどと聞くと、それがどんなもので日常生活でどのように活用されているか、また使用する際に気をつけること等を説明できる人が多いのではないでしょうか。今後のテストでは日常的な事象や社会的な事象と結び付けて出題される問題が多くなってきますので、教科書に出てくる用語の丸暗記ではなく、日常生活でどのように活用されているのか等を交えて知識の定着を図っていきましょう。さらに情報Ⅰで学ぶことは他教科と関連が強いものが多くあります。市場調査などでは地理の知識が必要かもしれません。個人情報や法の分野では公共が役に立つでしょう。その中でも特に数学Aの『数学と人間の活動』、数学Ⅰの『データの分析』が特に関連が強い分野です。違う科目と考えず、これらの学習もきちんと行いましょう。教科書等を使用して基本的な学習を終えたら問題集で実践的な問題を使用して演習していきましょう。
・リーディング
大問数6(変わらず) 時間:80分(変化なし)
・リスニング
大問数6(変わらず) 時間:60分(変化なし)
一見何も変わっていないようですが、今までの出題に加えて、『情報や自分の考えを適切に表現したり伝えあったりするために、理解した情報や考えを整理したり、何をどのように取り上げるかなどを判断したりする力を重視する』という観点の問が追加されるようです。試作問題では、リーディングにおいては(A)「授業中における生徒のスマートフォン使用の是非」(B)「環境に配慮したファッション(サステイナブルファッション)」をテーマとして、複数の意見やその根拠を、資料を活用しつつ整理したり、論理構成や展開に配慮して文章の推敲を行ったりする設問が示されました。リスニングでは「幸福感」に関する大学での講義を聞き、情報の伝達やディスカッションといった統合的な言語活動を通した学習の成果を測る設問が示されました。
大問が増えるといったアナウンスはないので、現行のいずれかの出題と差し替えになるでしょう。
リーディングでは、今まで以上に文章の精読が求められます。意見を取り違えるとその後の解答に大いに影響が出るからです。文法を一通り習得した後に、精読のために短めの文をきちんと訳せるように訓練しましょう(旺文社の英文問題精講シリーズなど)。同時に、意見をまとめながら読み進めていく必要があります。全面的に賛成or反対か、条件付きで賛成or反対か、根拠はどこに書いてあるか、など、注目するべきポイントを普段の学習の時点で意識しながら進めていくと良いでしょう。
リスニングでは、聞いている内容をまとめながら進めていく学習をする必要があるでしょう。聞きながらメモを取ることになっていきますが、まずは正確に聞き取れるようにしなければなりません。発音を知らない言葉は聞いても分からないので、日常の単語の学習から発音しながら覚えていく癖をつけてください。
大問数4→5 時間80分→90分
大問3に近代以降の文章が追加され、今まで大問4つ50点ずつだったものが1(45点)、2(45点)、3(20点)、4(45点)、5(45点)となります。
大問3には実用的な文章が出題されるようです。現代文が大問1つ増えて10分しか解答時間が伸びないのは、全大問を解答する受験生には難化といって差し支えないかと思います。共通テストではどこまで解答しても制限時間は一律80分でしたので、現代文のみだと一題40分ずつ、古文まで回答すると一題27分弱ずつ、全て解答すると一題20分ずつかけられる計算でした。今後は現代文のみで一題30分ずつ、古文までで一題22.5分ずつ、漢文まで解答するとなると一題18分ずつ(!!)で解かなければなりません。
上記では解答時間を平均時間で記載しましたが、実際には現代文25分ずつ、古文漢文15分ずつ(現行の共通テスト)のような、不均衡な配分で解答していた生徒が多いでしょう。現代文の方が古文漢文よりも読まなければならない文字数が圧倒的に多いからです。今年度の国語は現代文(大問1,2)が約8300字と約8100字、古文が約4600字、漢文が約3000字でした。
平均的な読むスピード(500字/分)だと、読むだけで現代文33分、古文9分、漢文6分の計48分かかるということです。そこから問題の根拠を探したり、選択肢を吟味したりするので、解答時間が32分というのはかなり心もとないです。読み返すことなどを考えたら40~50分は残しておきたいところです。
2025年度共通テストから追加される実用的な文章ですが、試作問題によると従来の読んで解くだけではなく、グラフや図表を読みとっていく必要があります。試作問題では気候変動に関連して日本の平均気温、降水量といった図表が添付されていました。地理ではおなじみの図ですが、地理総合が必修化したことでこのような出題が可能になったとも言えます。青山学院大学のように科目を横断した学習を要求する大学もすでに存在しています。
さて、全体的な対策としては今まで以上に時間を意識した演習を行うことです。問題集には制限時間が記載されているものもあるので、それを参考にしましょう。時間を超えてしまった場合には、語彙の不足や論理・因果関係の把握、言い換えなど、どこに問題があったかを見極めて修正していく必要があります。古文・漢文では可能な限り文法や語彙の問題を素早くこなし、読解に時間を割くことができるように学習していきましょう。
大問数:大問1・2必答、大問3~5中2題選択→全大問必答 時間:変化なし
《変更点》
数学ⅠAは従来の選択大問4に整数問題がありました。新課程では整数の単元が無くなったので(数学Ⅰや数学Aの他の単元に組み込まれています)、全ての大問が必答となっています。
整数は共通テストには出題されませんが、私大一般や国立二次試験での出題はあるでしょうから、対策はしておかなければなりません。
大問数必答2→3、選択3つ中2→4つ中3 時間:60分→70分
《変更点》
数学ⅡBは数学ⅡBCに変わり、必答問題も選択問題も一題ずつ増えています。必答問題は従来の大問1「三角関数、指数・対数関数」が分かれて大問1,2となり、従来の大問2「微分・積分」が大問3となります。選択問題では、従来は数学Ⅲで学習していた「平面上の曲線と複素数平面」が追加された、4題中3題の解答となります。
文系選択者は数学Cのうちベクトルまたは複素数平面を学習しなくてはならないので、学習の負担は増えると思われます。
さらに、数学B「統計的な推測」は共通テストでは選択ではあるものの、私大一般や国立二次試験での出題は大学によって様々です。大学が公表する入試要項を必ずチェックしましょう。
文系・理系ともに単元が増えて学習しなければならない内容は格段に増えています。特に文系の国立大学受験生はかなり負担増となるでしょう。ポイントは苦手を残さないこと、単元のつながりを意識して学習を進めることです。数学Ⅰで学習する内容はその後の科目でも使います。例えば、二次関数はその単元だけでなく、数学Ⅱの指数・対数関数、三角関数、微分・積分でも必要です。新しい単元に入るたびにイチからやり直していては時間がいくらあっても足りません。後の単元で十分な演習時間を確保するためにも、一度学習した単元の復習は切らさないようにしていきたいところです。
☆「地理総合、歴史総合、公共」
新設の科目で、三科目のうち二科目を選択して解答します。注意点としてはこの科目で選択した科目は、同じ名称のつく科目と同時選択できません。
例…×「地理総合、公共」+「地理総合、地理探求」
○「地理総合、公共」+「歴史総合、日本史総合」
配点は各50点です。
○地理
旧課程:「地理A」、「地理B」→新課程「地理総合、地理探求」
○日本史
旧課程:「日本史A」、「日本史B」→新課程「歴史総合、日本史探求」
○世界史
旧課程:「世界史A」、「世界史B」→新課程「歴史総合、世界史探求」
○公共
旧課程:「現代社会」、「政治・経済」、「倫理」、「倫理、政治経済」→新課程「公共、政治・経済」、「公共、倫理」
旧課程では可能であった地理歴史のA科目での受験が今後できなくなります。相当する「地理総合、歴史総合、公共」は二科目を勉強・解答しなくてはならないので、A科目ひとつで受験可能であった公立や芸術系の一部の大学では負担が増えるでしょう。
また、従来のA科目とB科目では、B科目を学習しておけばA科目の内容も自然と学習できましたが、新課程の歴史総合は日本史と世界史の近現代史をミックスした科目なので、当然別個に学習していかなければなりません。地理は、学習範囲は総合、探求を合わせて従来の地理Bとほぼ同じ程度と見受けられます。公民科目は、現代社会が公共になり、政治・経済または倫理と併せて学習することになります。公共という科目は政治・経済にかなり寄っていますが、そもそも覚える量が倫理より多いので有利不利などはないように思えます。
地理以外の科目は、旧課程に比べて受験のために学習しなければならない内容が多くなっています。今までよりも早い時期に選択科目に着手しなければ間に合わないでしょう。
また、資料、図、地図、会話などの読み取りが共通テスト出題の大部分を占めているので、教科書の語句暗記のみならず、図表や資料集を活用しながら学習を進めていくことも大切です。歴史科目では、同時代の日本の出来事と世界の出来事を関連付けて学習するように心がけましょう。
共通テストは大きく変わりますが、受験生がやるべきことは合格最低点を超える得点を取ることに変わりはありません。志望大学における共通テスト・二次試験の配点比率や、受験科目間の傾斜配点などに沿って学習時間の配分を行っていきましょう。多くのケースで時間のかかる国語数学英語、または国公立の二次試験・私立大学の個別試験で必要な教科の完成が第一となります。共通テストでしか使用しない科目は学習の優先度は低くなりますが、学習しなくてはならない量は増えています。今まで以上に自分の今の学力から逆算した年間の学習計画に沿って学習を進めていくことが重要となるでしょう。